
お足元の悪い中、四月の月次祭にご参列をいただきましてありがとうございます。
四月のことを古い言葉で卯月といいます。卯の花(ウツギ・白い花)の咲く月(旧暦)ということでしょう。
さて、四月は新しいスタートの月。新年度の月です。会社や学校が新しく始まって心うきうきする月ではございますが、その心を打ち消すような事態が起こっております。
疫病のことを古い言葉では「えやみ」と申しますが、ご承知の通り新型コロナウイルスによるえやみの感染者が急増しております。こういう時は自分の免疫力をつけることが大切です。しっかり食べて、しっかり寝て、よく笑う。このことが自身の免疫力を高めるのです。万が一の時にその自分の免疫力が闘ってくれます。目に見えないものとの闘いです。
今日の月次祭では大祓詞という1000年以上前から伝えられている長い祝詞を皆様とともに奏上させていただきました。そして月次祭の祝詞の後には、コロナウイルスによる疫病終息祈願の祝詞も奏上させていただきました。祈るということは人として大変重要です。
今月、国家として大事な行事があります。立皇嗣(りっこうし)の礼であります。本来であれば天皇の跡継ぎとなられるのは天皇の男子のお子様ですが、女性ですので男性である天皇の弟君が次に嗣がれる方となるということになります。秋篠宮さまが立皇嗣となられる儀式もコロナウイルスの感染拡大予防のため、規模を小さくするということとなりました。
神武天皇より126代続く天皇家でありますが、初代神武天皇より三代前には、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)という御方がおれらます。大国主命が天孫に国譲りをされた後、この葦原中津国を初めておさめることとなった瓊瓊杵尊ですが、その御妃は山の神・大山祇神の娘神、木花開耶姫(このはなさくやびめ)です。
一般に山の神はいろいろなものを生み出す女性神として考えられています。山から川を通して水が大地を潤し、豊かな養分は海をも豊かにします。さらにそこに育まれる多くの生き物を生み出すことから、山の神は母なる女性の神と考えられてきたのです。また人は古来死して母なる山に還るという信仰をもっています。大いなる山から命をいただき、そして山に還るのです。
ところでコノハナサクヤヒメの「さ」という言葉は稲を意味します。ですから木花開耶姫は「さくら」の精であり、「さくら」は稲の神の御神座をあらわします。古来田作りを始める時期を桜の花が咲くころを目安にしていたのに由来すると考えられます。
桜は米づくりに関わりが深くそれを主食にしてきた日本人にとって一番なじみのある重要な意味のある花なのです。こうした日本古来の信仰を知ると日本人としての心が豊かになります。すべての生き物は何らかのつながりがあり、不要なものはなくお互い助け合っているということに目を向ける感謝の気持ちを持つことが、心の豊かさにつながります。人を思う、動物を思う、自然にあるものを思いやる心が日本人の魂の特色なのです。
色々困難な状況の中で心も塞ぎがちかと思いますが、どうぞみなさまも心を奮い起こされまして乗り切ってください。いずれ終息する時に備えて今の時を大切に使っていただけたらよいかと思います。なかなか外には出られませんでしょうから、例えば本を読んだりする勉強の時間にすることができます。
季節の「冬」の意味には「ふえる」という意味があります。今はちょうどそんな「冬」の時期になっています。心の持ちようでこの時期をプラスにするということも可能です。
皆様の健康と弥栄をご祈念いたしまして、月次祭のご挨拶とさせていただきます。