
【9月朔日 月次祭宮司講話より】
9月朔日の月次祭にご参列くださいましてありがとうございます。9月は旧暦で長月と申します。長雨の月、という意味でございましょう。また今日は防災の日。諸々の災いから命を守るということを意識する日でございます。
ところで、皆様は奈良の東大寺にある大仏様にお参りしたことがあろうかと思います。しかし、あの大仏は何のために造られたのかを考える方は少ないかと思います。
あの大仏は当時の国家予算の大半を使ってできたといわれています。奈良時代の天平年間に天然痘という疫病が流行し、人口の三分の一、100~150万人ほどが亡くなったといわれます。約2年で終息したのですが、医療も十分ない時代にどうやって終息させたのかというと、病人を隔離する、人と人との接触をさける、あとは神仏に祈る、ということが主な対処方法だったようです。
衛生状態も悪かったと思うのですがそれでも人と人との距離を取ることで2年で収まりました。
その当時、国家的災害などがおこると、天皇がその政治的な責を負いました。この天然痘のために半分くらいの役人も亡くなりました。当時の官僚の中枢には藤原氏の兄弟がいましたが、その方たちも亡くなったのです。
今この国では安倍総理が退任せざるをえなくなりました。コロナが終息せず、政治の混迷の中強いリーダーを失ったことをふと重ねて思います。
大仏建立の発願は第一に亡くなられた多くの方々の御霊の供養と国難を脱するための力を得る為でした。銅を鋳型に流し込み、金メッキをするという当時は最先端の技術を要する大変な大事業です。その時八幡神が八百万の神々を率いて必ずこの事業を成し遂げると託宣され完成しました。東大寺についで各国に国分寺、国分尼寺ができました。国家仏教のお寺ができたのです。
仏教に守る力を託したその大きな後ろ盾になったのが神々であるわけです。そこで神と仏が仲良くこの国を守るというスタイルができたのだと思います。
当時の疫病のために財政はひっ迫し、それでもなお国を救うためにこの大きな大仏建立という祈りの事業がなされたのだということを我々も知っておかなければならないでしょう。
今日はその大いなる国家救済の神、八幡さまの御社の中で月次祭を行い、氏子さんだけでなく崇敬者の方々の国難を思うお気持ちも祝詞の中に込めさせて奏上させていただきました。
今の時期は気候の変動の季ですがどうぞ十分に気をつけられてお過ごしいただきたいと思います。心の平穏と体力の涵養が重要だと思います。それが免疫力を高めます。どうぞ健やかにお過ごしいただきたいと存じます。
本日は誠にありがとうございました。