
4月朔日月次祭 宮司講話より
本日は4月の月次祭にご参列をいただきましてありがとうございました。
旧暦4月は、卯月と言います。白い卯の花の咲くときからでしょうが、暖かくなって作物の植え込みをする月、植月とも言われます。
さて当社では、毎朝5時半に開門すると、お掃除奉仕の方々が境内と周辺道路の清掃をします。6時半からはラジオ体操で、30名くらい集まります。去年の今ごろに新型コロナの緊急事態宣言が出ましたが、なぜかそのころから参加者が増えてきました。多分生活様式の転換などによる戸惑いや行く先の不安が及ぼす心身の不調を和らげるためとは想像しますが、それに最も叶う場所として神社でのラジオ体操だったのでしょう。
緑に囲まれ清掃の行き届いた広場は心地よく、大勢の元気な明るい顔、声、心一つに合わせての体操は世の憂さを晴らす良い薬です。きれいな空気に輝かしい日の光も元気を与えます。出控え習慣の筋力の衰えも解消されます。「早寝・早起き・ラジオ体操」が今の世を救う良薬かもしれません。
体操後、お掃除組は休憩所のテントでお茶をします。火を囲み四方山話に花が咲きます。炎の揺らぎは心にも暖かさと安らぎをもたらします。鳥の声も清らかに聞こえてきます。お餅を焼いて食べることもあります。ゆったりとした朝のひと時は贅沢な時間かもしれません、でも、今私たちの生活の中から火が消えようとしていませんか。家がオール電化になりつつある、安全便利かもしれません。しかし味気ないですね。私たちの先人は、火と日の文字に「ヒ」という言葉を付けました。本来は霊魂を表す言葉です。「タマシヒ」のヒです。人は「ヒト」、霊魂を内にとどめおくものの意味ですね。死者はヒがなくなった体で、「ナキガラ」と言います。「人間は火を使う動物である」と言われますが、火のなくなった家はタマシヒの抜けた家と思います。便利さを追求するあまり、人間本来の力が失われてくるということに気づかなければなりません。ソファーのそばにリモコンを置いておくのは身体を動かさないでいることで、よくないと言われたりします。便利さを捨てるということも人間らしく生きるには必要なのかと思われます。スティーブ・ジョブスは子供にスマホを使わせなかったと言われています。それはスマホが脳に好ましくなく人間性を影響を与えるからだと思われます。
スマホを忘れて出かけるとお落ち着かないという人が多いと思いますが、人間が作ったものに囚われてしまっています。新型コロナに犯された世界の中で私たちは人間は人間らしく生きることが大切です。便利さやものの豊かさが決して心の豊かさをももたらすわけではない、ということに気が付かないといけないのでしょう。世界を混乱に巻き込んだコロナ災禍はこれからの生き方のキッカケを与えるのかもしれません。
四月は新年度新しい節目の時です。みなさまのご健勝と弥栄をお祈りいたしまして本日のご挨拶とさせていただきます。