
10月月次祭宮司講話より
神無月の月次祭にご参列をいただきましてありがとうございます。
10月を旧暦で神無月と申すのですが、この月は最も重要なる月であると考えております。神宮では神嘗祭、出雲では神在祭という重要な神々による縁結びのお祭りがございます。
神社のお祭りで最重要なお供物はお米がまず挙げられます。お米からできたお酒やお餅も重要です。お米が大切だと考えられているのは、我々日本人の主食が米であることに由来しております。すでに縄文中期には稲作が始まったと言われております。その当時は陸稲でございましたが、やがて弥生時代になると水田になって収穫量が増えたのです。日本人の根源が米、稲(いね)とは「いのちね(命根)」からくると言われています。経済も長い間米で回っていました。
明治になりましてから少し変わりましたがそれまではお米が経済の中心にあったのです。お米を作るのに様々な技術が必要です。農機具も必要ですし、先人が品種改良を行い大変な手間をかけて世界一おいしい米をつくるようになりました。
農業の時代から工業の時代になると、お米を育てることで育まれた心と技術が生かされたのです。農民=百姓というのは百の姓をもっている、つまり何人分もの能力をもっている、なんでもできるということです。たとえば天気を読むこともできます。
稲作はみんなでやらなければできません。和ができ、力を合わせ秩序を大事にする国民性も培われていきました。
災害の多い地であることも受け入れ生きてきたのです。あらゆる困難にも力を合わせて乗り越えてきました。そういう諸々を引きついでくださった祖先があり、恵みを与えてくれる自然があるなかでひき継がれてきた国民性なのです。そこに祖先崇拝、自然崇拝という信仰が育まれました。その信仰はやさしく寛容であります。いま利己にとらわれた世界の中で、神道が見直されているのは一つには寛容であるということではないかと思います。異質なものもおおらかに受け入れてゆく寛容性があります。それがこれから先の日本の発展にも寄与するだろうと思います。コロナ禍の難局にあってオリンピック・パラリンピックを行った日本人である我々が、どうやってこの先の困難を乗り越えてゆくのかを世界も見ていることでしょう。少子高齢化も日本の重要な課題です。新しい政権が誕生しましたが期待してゆきたいところです。
神国日本、神様のご加護を受け民族の叡知を結集して乗り越えていけると考えます。
希望を持つということは大きな力となります。
皆様もお体にご留意されましてご健康でお過ごしいただきたいと存じます。
雨天の中わざわざお参りを頂きましたことに感謝を申し上げる次第です。